インプラント治療の長い経験と口腔外科専門医による安全確実な手術
私の診療所は東京駅の真ん前に位置している関係でOLの方がよく受診されます。彼女たちの口の中を見て気がつくのは、多くの歯に“金属充填”が見られることでしょう。中には上下の歯が銀歯だらけになっている方もおられます。現在は使われていませんが「アマルガム充填」といって水銀と銀の粉を練り合わせて固まらせた合金、パラジュウム合金の詰め物やかぶせもの(冠)、さらに自費診療をされている方では金合金の詰め物や冠のオンパレードです。
どうしてこんなに金属がほとんどなんの疑問もなく口の中に使われているのでしょう。その理由としては次のようなことが考えられます。
第1に、これがもっとも大きな理由と思われますが、保険診療では詰めものの材料として金属がもっぱら使われたこと、このうち特に前述したアマルガム充填は極めて安易に詰められるため粗悪な充填が横行したといっても過言ではありません。
第2は、歯と同じ様な白く透明度のある良い材料が今までなかったことが挙げられます。かなり以前から“レジン充填”があったことはあったのですが、現在使われている“コンポジットレジン”のように歯と接着する性能はなく変色しやすいという欠点もあり、さらに十分な硬さないため奥歯には使えませんでした。
第3に患者さん自身の自覚や関心のなかったこともあげられます。
しかし、世の中が裕福になるにつれより自然で美しいものを求める傾向が社会生活のいろいろな場面で広まってきました。審美性の重視に加えてさらに大きな関心は、食品の安全性の問題でしょう。この点、歯科用金属は常時口の中にあり摩耗によって食品同様、人体に直接入る点で無視できないのではないでしょうか。
このように「審美」に加えて、「金属の毒性」と「金属アレルギー」の問題は歯科の金属による充填治療に大きな問題を投げかけているのが現状です。「金属の毒性」については、歯科用金属のそれぞれに問題のないことが検査された後認可され使われているため一応問題ないとされていますが、本当に大丈夫でしょうか、まだまだファジーな面が多いように思われます。
一方、「金属アレルギー」については、最初皮膚科領域から指摘され、その後歯科でも問題視されるようになった経緯があります。現在では、「歯科アレルギー科」など専門の施設もできるようになり、パッチテストによる検査が盛んに行われるようになりました。金属充填をすべて除去し、非金属充填に変えたところ長年苦しんでいた皮膚の病気が治ったといった報告が蓄積されています。
このように長年続いた歯科の金属によるう蝕の治療は、今大きな転換期にさしかかっているといってよいでしょう。少なくとも金属の毒性やアレルギーの問題を考えれば、充填用の金属としてはチタンを使うべきですが、技工上扱いにくい点やいうまでもなく色の問題はクリアできません。さらにこのチタンでさえ、最近毒性やアレルギーの問題が話題になりつつあります。
審美性と毒性の両方を考慮すれば、まったくといってよいほど無害なセラミックを中心に考慮すべきだと考えられます。従来でも歯冠全体をかぶせる“冠”特に前歯ではセラミックがよく使われてきましたが、残念ながら奥歯の虫歯の穴に詰めるためには大変な技術が必要でした。
近年、充填用の優れた材料(セラミックとレジンのハイブリットの材料)が開発されたことにより、口の中から金属を追放する“ノンメタル”あるいは“メタルフリー”といった概念が生まれつつあります。今や虫歯治療で金属だらけになった口の中でもどこに虫歯があったか分からないほどきれいに治療することが可能になりました。